成年後見制度の解説【弁護士監修】最新版
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度です。本記事では、成年後見制度の仕組みや利用方法について、弁護士の視点から詳しく解説いたします。
成年後見制度の基本的な仕組み
法定後見制度
すでに判断能力が不十分な状態にある方を対象とし、家庭裁判所によって援助者が選ばれる制度
- 後見(判断能力が欠けている状態)
- 保佐(判断能力が著しく不十分な状態)
- 補助(判断能力が不十分な状態)
任意後見制度
判断能力が十分なうちに、将来の判断能力低下に備えて援助者を自分で選んでおく制度
後見類型について
対象者
判断能力が欠けているのが通常の状態にある方(重度の認知症、知的障害、精神障害など)
後見人の権限
- 財産管理における包括的な代理権
- 本人の法律行為の取消権
保佐類型について
対象者
判断能力が著しく不十分な状態にある方(中度の認知症、知的障害、精神障害など)
保佐人の権限
- 重要な法律行為についての同意権
- 特定の法律行為についての代理権(家庭裁判所の審判による)
- 同意を得ない重要な法律行為の取消権
補助類型について
対象者
判断能力が不十分な状態にある方(軽度の認知症、知的障害、精神障害など)
補助人の権限
- 特定の法律行為についての同意権
- 特定の法律行為についての代理権
- 権限は家庭裁判所の審判で個別に定められる
任意後見制度について
特徴
- 将来の判断能力低下に備えた制度
- 後見人の権限を契約で自由に定められる
- 信頼できる人を後見人に選べる
手続きの流れ
- 公正証書で任意後見契約を締結
- 判断能力低下時に家庭裁判所が任意後見監督人を選任
- 契約の効力が発生
成年後見制度の利用手続き
申立ての流れ
- 家庭裁判所への申立て
- 申立書の提出
- 戸籍謄本、診断書等の提出
- 家庭裁判所による調査
- 書類審査
- 本人の面接
- 審判・後見人等の選任
後見人等の職務内容
財産管理に関する職務
- 預貯金の管理
- 不動産の管理
- 各種契約の締結・解除
身上監護に関する職務
- 医療に関する契約
- 介護に関する契約
- 施設入所に関する契約
報告義務
- 定期的な家庭裁判所への報告
- 重要な財産処分における許可申請
成年後見制度の費用
申立費用
- 収入印紙代
- 登記手数料
- 鑑定費用
後見人等への報酬
本人の財産状況や後見事務の内容などを考慮して、家庭裁判所が決定します。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が不十分な方を支援する重要な制度です。本人の状況に応じて、後見、保佐、補助、任意後見の中から適切な制度を選択することが重要です。
制度の利用を検討する際は、できるだけ早い段階で弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家のアドバイスを得ることで、より適切な支援を受けることができます。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。具体的なケースについては、必ず弁護士にご相談ください。