生前の預貯金使い込みに関する法的対応
生前の預貯金の使い込みは、相続において深刻な問題となることが少なくありません。特に高齢の親の預貯金を子が使い込むケースでは、他の相続人との間でトラブルとなることがあります。本記事では、生前の預貯金使い込みに関する3つの重要なポイントについて、弁護士の視点から詳しく解説いたします。
第1のポイント:使い込みの法的性質
贈与として認められるケース
被相続人の明確な贈与の意思が必要となります。
例示
- 「生活費として使ってよい」との明確な意思表示
- 「必要なものを買うために使ってよい」との指示
→ 使用された金額は正当な贈与として扱われる可能性
不法行為・不当利得として扱われるケース
- 被相続人の意思に反する使用
- 意思が不明確なままの使用
→ 損害賠償または不当利得の返還義務が発生
委任関係に基づく使用
典型例
- 入院費用としての使用
- 介護費用としての使用
使用の記録や領収書などの証拠保管が重要
第2のポイント:使い込みの立証方法
1. 通帳・キャッシュカードの利用履歴
- 預金の引き出し記録
- 振り込みの記録
- 使用時期・金額の特定
2. 銀行取引明細
- 通帳未記帳取引の確認
- 電子取引の記録
- 取引明細の開示請求
3. 使用目的の証拠
- 医療費の領収書
- 介護費用の領収書
- 生活必需品の購入記録
第3のポイント:具体的な対応方法
1. 話し合いによる解決
- 使用の経緯・目的の確認
- 正当性の検討
- 専門家を交えた協議
2. 税務面での対応
相続時精算課税制度の活用
- 生前贈与としての処理
- 相続財産の前渡し処理
※被相続人生存時のみ可能
3. 遺産分割での調整
- 使い込み分の相続分からの控除
- 実質的な公平の確保
4. 法的請求
- 損害賠償請求
- 不当利得返還請求
使い込みの事実と金額の立証が必要
まとめ
重要な注意点
- 使い込みの法的性質の見極め(贈与・不法行為・正当使用)
- 立証のための証拠収集の重要性
- 状況に応じた適切な対応方法の選択
このような問題については、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。専門家のアドバイスを得ることで、より適切な対応を取ることができます。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。具体的なケースについては、必ず弁護士にご相談ください。