遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、相続人の最低限の相続分を保障するための制度です。本記事では、遺留分侵害額請求の制度や手続きについて、弁護士の視点から詳しく解説いたします。
遺留分制度の基本的な考え方
遺留分とは、被相続人の財産のうち、一定の相続人に保障された最低限の相続分のことです。被相続人が遺言で財産を特定の相続人や第三者に与えたり、生前贈与したりした場合でも、他の相続人の遺留分を侵害することはできません。この遺留分を確保するための請求が、遺留分侵害額請求です。
遺留分権利者について
遺留分が認められる相続人
- 配偶者
- 子
- 直系尊属(親、祖父母)
※兄弟姉妹には遺留分は認められていません
遺留分の割合の例
配偶者と子が相続人である場合:
- 配偶者の法定相続分:2分の1 → 遺留分は4分の1
- 子の法定相続分:2分の1 → 遺留分は4分の1
遺留分の算定方法
算定の基礎となる財産額の計算
- 被相続人が死亡時に有していた財産の価額
- + 相続開始前1年間の贈与の価額
- + 相続人への相続開始前10年間の生前贈与の価額
- - 債務の全額
遺留分侵害額請求の手続き
請求の期限
- 相続開始を知った時から1年以内
- 相続開始の時から10年以内
請求の方法
内容証明郵便による通知が一般的です。請求書には以下の内容を明記:
- 遺留分を侵害されている事実
- 回復を求める意思
減殺の順序
- まず遺贈が減殺される
- 遺贈の減殺だけでは不足する場合、生前贈与が減殺される
実務上の留意点
算定の複雑さ
遺留分の算定には専門的な知識が必要となります。特に、生前贈与の評価や、債務の控除などについては、複雑な計算が必要となる場合があります。
時効への注意
請求の時効にも注意が必要です。相続開始を知った時から1年、相続開始時から10年という期間制限を過ぎると、請求権が消滅してしまいます。
立証の必要性
遺言の有効性や生前贈与の事実関係について争いがある場合には、それらの点についても立証が必要となります。
遺留分放棄について
遺留分権利者は、家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ遺留分を放棄することができます。
- 相続開始前に行う必要がある
- 一度放棄すると取り消しができない
- 家庭裁判所の許可が必要
- 正当な理由が求められる
調停・訴訟による解決
調停による解決
裁判所の調停委員会が間に入り、当事者の合意による解決を目指します。
訴訟による解決
主な争点:
- 遺留分の算定基礎となる財産の範囲
- 財産の評価額
- 減殺の順序や範囲
まとめ
遺留分侵害額請求は、相続人の最低限の権利を保護するための重要な制度です。しかし、その行使には専門的な知識と適切な手続きが必要となります。請求を行う場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、適切な対応を検討することをお勧めします。
また、遺留分をめぐる紛争を予防するためには、生前の段階から適切な相続対策を行うことが重要です。遺言の作成や生前贈与を行う際には、遺留分への影響も考慮に入れて検討する必要があります。